「考える人」2009年春号「ピアノの時間」2009-04-05

昨年の「エスクァイア」もそうでしたが、非音楽雑誌のピアノ特集って、専門誌とは突くツボがちがってておもしろいですよね。

で、出たばかりの「考える人」。矢野顕子さんと高橋悠治さん、というインタビューイの選択がすばらしい。音楽雑誌でもこの組み合わせはまず見当たらない。

ちなみに、特集の最終ページをめくると、坂本龍一さんの「音楽は自由にする」の広告があらわれます。うまいね新潮社。

「私の好きなピアノ・アルバムベスト3」というアンケートでおもしろかった回答を紹介します。

…もちろんアニメのサントラだが、すぎやまこういちの音楽がすばらしく、LPで繰り返し聴き、CDも買った。中に羽田健太郎のアドリブがあってこれがひときわ凄い。(『すぎやまこういち/伝説巨神イデオン』に対するコメント、小谷野敦さん)

シューマンのピアノ協奏曲は、ウルトラセブン最終話のBGMとして初めて聴いた。(原武史さん)

オタクネタですみません。あ、井上章一さんが紹介しているダマーズ、シサスク、吉松隆という「フランス和声」系のセレクションはいいですね。書店のBGMに最適だと思います。ちなみに、ブックファースト新宿店は、7つの売場ですべてBGMが異なるんですが、文庫・新書・実用書の売場では、まさにフランス系のピアノ曲がずーっと流れています。最近は仕事帰りに用もないのによく立ち寄ってしまいます。

もうひとつ。矢野さんと悠治さんの共演といえば名盤『ブロウチ』ですが、昨年、悠治さんのコンサートで《ゆめのよる》を聴きました。歌は波多野睦美さん。バッハで始まり、ブゾーニ、自作、モンポウの《沈黙の音楽》の抜粋、そして波多野さんとのモンポウの歌曲で締め、というプログラム(《きみの上には花ばかり》は絶品でした!)。《ゆめのよる》はアンコールの1曲目。ちなみに(「ちなみに」が多いな)、2曲目、というか本当の終曲はバッハの《マタイ受難曲》のアリア《主よあわれみたまえ》。最後にBack to Bach、という構成もさすがと思いましたが、みずから編曲したピアノソロ版での録音(『Yuji Plays Bach』に収録)もあるこの名曲を最後の最後にもってくるなんて、すごいサプライズ! もちろん波多野さんの歌は最高でした。このふたりでアルバム作る話はないんですか、エイベックスさん?

ラ・フォル・“ソワレ”・オ・ジャポン2009-04-08

通勤電車の中で、バッハの《無伴奏チェロ組曲》を聴きながら新書を読む、というのが最近の習慣になっています。演奏はヤープ・テル・リンデン。貧乏人の味方、ブリリアント・クラシックスの、2枚組で約1000円のCDです。

ネット上では「カザルスを思わせる」という評も見られるリンデンの演奏は、古楽器にしてはめずらしくゆったりめのテンポ。ビルスマなどのいかにも舞曲らしいメリハリのきいた解釈になじめなかった私にとっては、理想にかなり近い、とても心地よく聴ける演奏です。読書のBGMにぴったり、というのは後になって発見したこと。

それにしても、日本人は《無伴奏チェロ組曲》が大好きなようです。カザルスのSPは名曲喫茶の定番メニューだし、CMでもよく使われるし(清水靖晃さんのサックス版も)。バッハをテーマとした今年の「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」でも、やたらと演奏回数が多い。しかも、ヴィオロンチェロ・ダ・スパッラの寺神戸亮さんをはじめ、どの公演もチケットが売り切れるのが早かった。《マタイ受難曲》ほか3大宗教曲なんて、3000~4000円という破格の安さなのに、まだ余ってるみたいですよ。もったいない!

というわけで、寺神戸さんも鈴木秀美さんもとれなかった私のLFJスケジュールは、5月3日夜のシュ・シャオメイの《ゴルトベルク変奏曲》と、4日夜のBCJの《ヨハネ受難曲》がメイン。どちらも終演が23時過ぎ。やはり夜は渋い曲が似合います。